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明るいだけじゃもったいない。お家の照明どう選ぶ?|光の効果から読み解く照明コーディネート【応用編】

照明器具で美しい空間をつくる方法は?

1.光の影とその効果

光が物体に当たると影ができます。その影を上手に使うと美しい空間をつくることができます。

100倍お家が好きになる美しいフォルムの見せ方

一般的に住まいの照明は天井に付いています。この天井からの照明は光が均一で平面的になり、面白みのない普通の空間になります。これは安心感があると言えるかもしれません。住まいにはこのような安心感のある空間が必要ではありますが、お家時間が増えている昨今、非日常の空間をつくり楽しむ時間も豊かな暮らしへの一歩です。
天井、壁、床のどの面へ光を当てるかにより、空間は表情を変えます。
天井全体を照らすとのびやかな空間になり、下方向へスポット的に光を照らすと非日常的な空間が作りやすくなります。そこで、「1室多灯」ひとつの部屋に間接照明やダウンライト、スタンドライトなど、いくつかの照明を配置することでTPOに合わせた空間演出が可能になります。
全体を照らす時にはダウンライトと間接照明を併用し、非日常の時には間接照明とスタンドライトを使います。家族の顔を照らす光の角度が変わると家族の表情が全く違う雰囲気になります。

ポートレイト写真の撮影方法に「レンブラントライティング」という手法があります。オランダの画家レンブラントが絵画の中で使ったライティング手法です。
この陰影のある美しいフォルムや表情は全体の明るさを落とし、被写体への光の角度をやや斜め上、逆光気味に設定し表現していると言われています。
室内照明の明暗は光の量を調光スイッチで操作することで調整します。人に当たる光をスポット力のあるダウンライトを使用したり横からの光のスタンドライトなどを取り入れることで人の表情はもちろん、光の当たる物にも立体感と陰影が現れます。

2.お家の照明の選び方

住まいの照明はどのように選んでいけばよいかの提案とテクニックのご紹介です。

取り付ける光と付け足す光。

どんな光のある空間にするかイメージができたら、照明器具を選んでいきます。その際、必要な照明器具の種類を2つに分類します。

建築工事で最初に取り付ける光
ダウンライトや間接照明、シーリングライトなど部屋全体の明るさとして必要なもの。

建築工事で照明器具は多くを付け過ぎないようにし、必要最低限なものを選定します。「1室多灯」と言って一部屋の中にいくつかのバリエーションで照明器具を配置します。例えば、ダウンライト2灯と間接照明などです。スイッチの操作をダウンライトと間接照明で2つに分けるなど、いくつかのスイッチ回路を設けるとより良くなります。また調光機能はできる限り取り入れてください。主に部屋全体の明るさを確保し、生活に必要な機能をキープする役目をつくります。

 

必要に応じてコンセントなどを利用して付け足していく光
フロアスタンドやテーブルライト、キャンドルなど、自由に配置ができるもの。

フロアスタンドなどの付け足していく照明器具は、コンセントにプラグを差すことで気軽に配置ができます。壁のタイルなどのこだわりの素材の表情をより豊かに表現したいときやリラックスしたいときなどフレキシブルに対応することができ、インテリア性もあるデザインの器具が多いため、空間のインテリアコーディネートを楽しんでいただけます。
特に低い位置にテーブルライトを配置し光の重心を低くすることでリラックス効果が高まり、就寝前の時間をゆったりと過ごすことができるのがポイントです。

また、気持ちの良い季節の時には、庭にライトを置いて自然の風や香りを取り入れることで、お家の環境を変えてみるのもおススメです。庭に照明を置く時のポイントは、「室内の明るさ<庭の明るさ」とすることです。室内の明るさを落とし、庭のライトアップを楽しんだり、BBQを楽しんでみてください。
リゾートに来たような非日常の感覚になると思います。室内より庭の明るさを強くすることで虫が室内に入るのを自然に防いでくれる効果もあります。

おもてなしの玄関をつくる光

ここでは、照明計画のテクニックを使った光の効果的な使い方をご紹介します。

道路を運転している時、誰しもがトンネルを通過した経験があります。
出口の見えない長いトンネルを通過するときを思い描いてください。

トンネルの入り口で暗い空間に入っていくときは、何とも言えない緊張感を抱きます。薄暗いトンネルの中、車を走らせてしばらくすると出口が見えてきます。出口の自然光の明るさにホッとひと安心し、そちらへ進もうとする心理が働きます。
この心理は、日常の様々な場面でみられます。例えば、道に迷ってしまったとき、先に明るい街が見えた時の安心感。暗い夜道を歩いていた時、その道の先に大通りの賑わいが感じられたときなど、たくさんの場面が想像できるかと思います。人は行く先に明るい場所があると安心し、暗い場所へ入るときには不安を抱く。この心の変化を照明の明るさの配置へ応用した手法を「サバンナ効果」といいます。

この「サバンナ効果」を使って、住まいの照明にどう反映するか。効果的な場所はお客様を迎え入れる玄関です。
もちろん家族も同様ですが、玄関に入った時に「素敵!」と感嘆の声が聴ける夜の玄関は、玄関の土間(タイル面)ではなく、その先の壁に明るさと演出がある場合が多いです。例えば正面の壁に素敵な絵が飾ってあり、そこにしっかりとした明るさを持ってきている場合や、正面に中庭があり、室内空間は少し暗くても、その先の中庭がしっかりとライトアップされ、明るい時などです。

かつて、玄関は家の顔と称され、玄関の土間付近にしっかりとした明るさが欲しいと言われていました。しかし、現代の暮らしでは玄関先に座って、ご近所さんとおしゃべりするという光景を見ることは少なくなりました。玄関の見せたくない部分は明るさを弱めにし、その先を明るくすることで、ホテルのエントランスのような玄関の演出をすることができます。
家族が帰ってきたときも脱ぎっぱなしの靴に視線が行くよりもその先の美しい景色に視線が行く方が、ほっとし、心穏やかにリビングへ入っていけることでしょう。



光の効果から読み解く照明コーディネート【応用編】のまとめ

照明器具は住まいに必ず必要となる道具で人間の生体リズムと深いかかわりを持っています。
お家に帰ってから過ごす夜の時間をリラックスした安らぎの時間としてくれる光をつくる3つの法則は
「赤みのある光の色」「明るさを落として」「低い位置へ光を配置」をすることです。

インテリアデザインとの調和を加味しながら適切な明るさ、機能を備えた照明器具の選定をし、豊かなくらしと健康な毎日を送れる照明空間でぜひ過ごしてみてください。
新たな会話が生まれ、家族とのコミュニケーションが増えるきっかけになるかもしれません。

お家を新しく建てるときには、どんな照明のインテリア空間にしたいのかを参考になる写真で設計士やインテリアコーディネーターと共有すると良いでしょう。お家で過ごす時間は夜がメインです。時間が許すようであれば、夜のモデルハウスを見学して様々な照明器具を体感してみるのもおススメです。

文中施工写真・資料提供:大光電機株式会社 https://www.lighting-daiko.co.jp

監修 インテリアコーディネーター・建築士 鈴木 珠未氏

福川建築 設計インテリア部門 Kors事業部

住宅会社でのインテリアコーディネート業務を経験後、静岡県浜松市を拠点とし、くらしのあかり(照明)を中心にしたインテリアコーディネートの提案を行う事務所を立ち上げる。長年住宅メーカー内でインテリアコーディネート立案をしていた経験を生かし地元の住宅会社や不動産会社をメインにひと部屋からプランの策定支援を行っている。また、大工部門を併せ持つ事業形態を生かし大工工事の請負や現場で必要な図面の作成、インテリア提案などのプロデュースも行っている。


福川建築[Kors事業部] https://l-kors.jp

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