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住宅に相続税はかかるのか?いつかはやってくる相続問題について解説します!
目次
相続税について
そもそも、相続税とはどのようなものなのでしょうか。以下に、相続税の概要や申告をするまでの流れなどについて見ていきましょう。
相続税とは?
相続税とは、被相続人から遺産を相続した時に、得られた利益に対して支払う税金です。従って、遺産の中で預貯金や現金以外にも、不動産や有価証券、車両、貴金属、美術品など価値があると評価された品物には、換金価値があると判断されます。
相続税は、相続した遺産の価値に応じて税率や納税額が決められますので、高額になるほど納付額が高くなります。ただし、基礎控除や特例等の制度を活用することで、相続税がかからないケースも見られ、その場合には申告の必要はありません。
相続税の流れについて
相続税の申告は、まず必要があるかどうかを判断することから始まります。相続税は、被相続人の死亡を知った日から10カ月以内に申告をしないといけませんが、この期間中に法定相続人の数や遺産総額を調査して、申告が必要ないと判断できた場合には申告をする必要はありません。
大まかな流れとしては、まず戸籍等を取り寄せて、法定相続人の人数とその所在を確定します。
次に、遺産や負債の調査を行います。不動産や美術品など、客観的な価値の判断が難しいものに対しては、専門家から評価額の証明をもらうことになるでしょう。また、遺言書の有無も調査して、遺言書がない場合には法定相続人全員が協議して遺産分割協議を行わなければなりません。誰が何を相続するかが決まったら、その内容に応じて相続税の申告をするという流れになります。
住宅に相続税はかかるのか?
では、自分が住んでいる住宅に相続税はかかるのでしょうか。住宅も不動産として遺産の一部に加えられますが、評価の算定をする場合には、他の遺産とは異なり、特例を活用することができます。また、配偶者は被相続人と協力して現状の遺産を蓄えられたと考えられますので、相続する際の控除も手厚い内容です。これらを活用することで、居住していない不動産やその他の遺産よりも好条件で相続をすることはできますが、遺産には加えなければなりません。
住宅に相続税がかからない場合
居住不動産に相続税がかからないのは、どのような場合でしょうか。以下に、住宅を相続するときに利用できる救済措置についてご紹介していきます。
遺産相続の総額が基礎控額以下の場合について
相続税は、正味の遺産総額から各種控除を差し引いた金額に対して課せられます。従って、財産と負債がある場合には、保有していた財産から借金などの負債を差し引いた金額が正味の遺産総額です。そこから各種控除を差し引きますが、誰でも利用できるのが基礎控除です。
基礎控除は、3000万円+600万円×法定相続人の人数で算出されますので、相続人が一人の場合でも3600万円を正味の遺産総額から差し引くことができますし、法定相続人が多くなるほどその控除額も大きくなります。遺産総額が基礎控除額以下であれば、当然相続税は発生しませんので、住宅を相続しても納税や申告の必要はありません。
配偶者控除が適用される場合について
配偶者が相続する場合には、特例として配偶者控除を適用することが可能です。この特例は婚姻期間が1日であっても適用できますし、金額が大きいので積極的に活用しましょう。
具体的には、配偶者が相続する場合には課税価格の合計額×配偶者の法定相続分か1億6000万円のいずれか大きい方を控除額として差し引くことができます。従って、住宅も含めて総額1億6000万円以上の遺産を相続しない限り、配偶者が相続税を納める必要はありません。
小規模宅地等の特例が適用される場合について
小規模宅地等の特例は、相続税がかからない場合でも申告しなければならないというリスクはありますが、逆に言えば手間をかけることで相続税が安くなるか、免除されます。
この制度は、被相続人が居住用または事業用として使用していた宅地を相続した場合に、要件を満たすことで当該不動産の評価額が最大80%(貸付事業用の不動産は50%)減額されるというものです。相続税の申告期限までに遺産分割が成立していることが要件で、配偶者ならば無条件で、被相続人と同居していた親族は申告期限まで所有・居住を継続していた場合、配偶者または同居親族がおらず、持ち家のない親族が取得していた場合には申告期限まで所有していた場合に利用できます。また、面積にも上限があり、特定居住用宅地は330平方メートル、特定事業用宅地であれば400平方メートルを超えなければ80%、貸付事業用宅地は200平方メートルを超えなければ50%の減額が可能です。
住宅を相続する場合に気を付けたいこと
相続の際には、できるだけトラブルに巻き込まれることなく手続きを進めたいものです。以下に、相続問題を避けるためにどのような点に注意すべきかを見ていきましょう。
生前贈与の場合は相続税ではなく、贈与税がかかる
自分の意思がしっかりしているうちに、財産を贈与しておきたいと考える方は少なくありません。しかし、高額の贈与は相続税よりも納税額が大きくなりますので、注意が必要です。相続税は比較的税額が抑えられていますが、贈与税は年間110万円しか基礎控除がありません。そして、毎年基礎控除額の範囲内である110万円以内を贈与していても、控除が認められないことがあります。特に、相続開始前の3年以内に贈与されたものについては、相続税の対象になります。
配偶者居住権を考える
配偶者居住権とは、自宅を相続しなかった場合でも、配偶者の生存中は居住できる権利です。例えば、夫婦ともに高齢で配偶者が相続してもすぐに子どもが相続することになりそうな場合などは、最初から子供に相続させて配偶者が元気なうちは今まで通り居住することを選択する世帯も多いでしょう。
配偶者居住権は、遺産分割で権利が取得できたとき、遺贈の目的として配偶者居住権が挙げられたとき、被相続人と配偶者間で配偶者居住権を取得させる内容の死因贈与契約があるとき、家庭裁判所による審判を受けたときなどに権利を主張できます。ただし、法務局で登記を申請しなければ、第三者に対して主張はできません。
相続後の共有名義は避ける
相続する際、例えば配偶者や子供間で遺産分割協議を行わず、法定相続分で共有名義の登記を申請するというケースも少なくありません。しかし、後日自宅の管理や処分について、共有者間で意見が食い違った場合には、トラブルになる可能性が生じます。共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ管理や変更ができないため、スムーズな運用や売却を検討する際に面倒が増えがちです。加えて、共有者が亡くなった場合は、その持分を子供などの法定相続人が相続するため、世代が進むごとに所有者の人数がどんどん増えて、持分が複雑化します。
相続税対策は早めに進めるようにしましょう
このように、住宅を相続したときには相続税が発生するケースもありますので、相続税に関する控除や特例等についてはしっかり確認して、必要があれば申告を期限内に行いましょう。また、実際に住宅を相続する際にも、トラブルや新たな課税が発生しないように、親族間での話し合いや手続きをきちんと進め、必要ならば税理士などの有資格者の方に相談し、生前中にしておくことをおすすめします。
監修 大森 英則氏
FP相談室/ファイナンシャルプランナー
主に個人のお客様のお金にまつわる様々なご相談(教育費・住宅費・老後費用など)を承り、お客様の紹介を中心に活動させていただいてます。具体的な事例を交えたわかりやすいご案内が特徴で、企業様や市町村にてセミナーを実施。また同業の営業の方の研修も行っています。金融資格だけでなく、ピンクリボンアドバイザー、認知症介助士、住宅ローンアドバイザーなどの資格を持つ異色のファイナンシャルプランナーです。
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