家づくり

平屋人気が再燃!その魅力と注意点解説します!

住宅街を見渡すと、2階建てや3階建ての一戸建て住宅が多い印象がありますが、ブームが再熱しているのが「平屋住宅」です。
シニア世代は平屋住宅が主流だった時代をご存じかと思いますが、いま住宅購入を検討する若い世代や子育て世代からも再び注目を集めています。
魅力的なポイントが多いため、どうしてもメリットばかりクローズアップされがちですが、注意点も踏まえたうえで、家族のライフスタイルに合うかどうかを判断することが大切です。
今回は、平屋住宅が人気を集める理由と、計画時に気をつけたい点についてご紹介します。

平屋住宅とは?

平屋住宅は「一階建て」の住宅のことで、階段の上り下りがない住まいを指します。玄関をはじめ、リビング、キッチン、ダイニング、寝室、浴室、トイレなど、生活に必要なすべての空間が一階に集約されているのが特徴です。かつては多くの住宅が平屋でしたが、日本の人口増加や土地価格の高騰などにより、次第に2階建て・3階建ての住宅が主流になっていきました。しかし本来、平屋は日本人にとって最も馴染み深い住宅形式であり、スムーズな生活動線や、家族が自然と集まる空間づくりに適しています。「少し昔の家」といったイメージを持つ人もいるかもしれませんが、近年ではデザイン性や機能性も大きく進化し、オシャレで快適な平屋住宅が増えてきたことも、再び注目されている理由の一つとなっています。

平屋住宅7つの魅力

平屋住宅の魅力は、スマートな生活動線はもちろん、家族とのコミュニケーションや住空間の感じ方など実にさまざま。ここでは、平屋住宅ならではの魅力を7つに分けて解説します。

①ワンフロアでスムーズな生活動線

平屋住宅の一番の魅力とも言えるのが「生活動線のスムーズさ」です。2階建てや3階建てでは、階段の上り下りが日常的に発生します。たとえば、2階にキッチンがあれば、買ってきた食材を2階まで運ぶ必要があり、ゴミ出しのたびに階段を下りて外へ出る手間もあります。また、洗濯機が1階にあっても、洗濯物を上階のベランダまで運んで干すなど、家事ごとに移動が多くなりがちです。平屋住宅であれば、こうした家事をすべてワンフロアで完結できるため、移動の負担が大きく軽減されます。家の中を移動する範囲が多いと、11つの家事にも時間と労力が掛かります。共働き家庭が多い現代では、日々の家事負担を減らせることは大きな魅力と言えるでしょう。

②家族とのコミュニケーションの取りやすさ

2階建て以上の住宅では、フロアごとに家族がいる場所が分散しやすいです。一緒に過ごす時間が少なくなり、コミュニケーションが減ってしまう原因にも。平屋住宅は、リビングを中心に子ども部屋や寝室を配置しやすいため、自然と家族が顔を合わせる機会が増えてコミュニケーションが取りやすいです。子どもの様子にも目が届きやすく、子育て世帯にとっての嬉しい安心材料となるでしょう。

③間取りの自由度や開放感が高い

平屋住宅は、2階部分を支える柱や階段スペースを必要としないため、床面積を有効に使いやすく、間取りの自由度が高いのが特長です。奥行きを広く取れることで、視覚的にも開放感のある住空間をつくりやすくなります。また、天井の高さを自由に設計できるため、大きな窓や照明、シーリングファンを取り入れるなどインテリアの幅も広がります。

④自然を感じやすい

1階での生活は、庭やテラスを活かす機会も多くなり、自然を身近に感じやすい住まいの環境とも言えます。好きな植物を植えてガーデニングを楽しんだり、日々の生活に自然の潤いを取り入れたりすることができます。庭やテラスは、家族が集まれる「セカンドリビング」としても活用可能。外部からの視線が気になる人には、中庭を設けてプライバシー性を高める設計も人気があります。

⑤地震や台風などの災害に強い

平屋住宅は構造的に上部の重量が少ないため、地震時の揺れに対して安定しやすい特長があります。2階建てでは、2階部分の重みが柱や壁に大きな負荷をかけますが、平屋住宅は荷重が分散しやすく構造上有利になるケースが多いです。また、建物の高さが抑えられていることで、台風の際に受ける風の影響も軽減されやすいメリットもあります。さらに、万が一の災害時でも、家族全員が同じフロアで暮らしているため、安否確認がしやすいという安心感もあるでしょう。

⑥バリアフリー対応がしやすい

ワンフロアで階段のない平屋住宅は、高齢者や小さな子どもが安心できるバリアフリー対応にも適しています。若いうちは階段の上り下りも気にならないかもしれませんが、足腰が弱くなる高齢になるとその負担は増し、バリアフリーの魅力はより大きくなります。車いすの生活になった際にも、段差の少ない平屋であれば移動がしやすく、安心して暮らすことができます。小さなお子さんがいるご家庭では、階段での事故のリスクがないことも、安心できるポイントのひとつでしょう。

⑦メンテナンス費用の軽減

住宅は、建てた後の定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスには費用が発生しますが、2階建てよりも平屋住宅の方が、メンテナンス箇所を少なくできるケースが多く費用負担を抑えられます。2階建ての場合は、高所の作業時に足場を組む必要があり、費用がかさみやすくなりますし、高い位置の損傷は気付きにくく、メンテナンスが遅れてしまうこともあります。電気や水道などでトラブルが起きた場合も、1階と2階に分かれていることで対応が複雑になり、結果として費用がかさんでしまうケースも珍しくありません。こうしたランニングコストの軽減も、平屋住宅を選ぶうえでの魅力になっています。

平屋を選ぶときの注意点

メリットが多い平屋住宅ですが、いくつかの注意点やデメリットもあります。それも加味したうえで住宅選びを進めましょう。

土地の広さが必要

平屋住宅は、ワンフロアですべての生活スペースを確保するため、ある程度の土地面積が必要になります。土地価格が高騰しているエリアでは、予算を超えてしまう可能性もあるため注意が必要です。また、すべての土地に対して建物を敷地いっぱいに建てられるわけではありません。敷地面積に対して建てられる建物の面積の割合を示す「建ぺい率」という建築ルールがあります。土地面積だけでなく、建ぺい率も確認しながら土地選びをしましょう。

建築コストが割高

平屋住宅は、土地代だけでなく、2階建てに比べて建築コストが割高になる傾向があります。平屋住宅の場合は1階部分にすべての機能を持たせるため、基礎・屋根・外壁が相対的に広くなり、その分コストも上がりやすいのです。コストを抑えるには、建物の形状をシンプルにしたり、設備の選び方や家事動線を効率的に設計するなどの工夫が求められます。

日当たりが悪くなる場合がある

平屋住宅は建物の高さがない分、隣接地に高い建物があると、日当たりが悪くなってしまう可能性があります。設計段階で、窓の大きさ・向き・高さを工夫し、日差しが入りにくい北側には天窓(トップライト)を設けるのも有効です。方角や周囲の建物との関係をしっかり確認し、自然光をうまく取り入れた明るい住空間をつくりましょう。

水害時の対策が必要

水害に関するニュースも多い近年。2階がない平屋住宅は、万が一の水害時に上階への避難ができないというリスクがあります。川・海・山などが近いエリアでは特に注意し、ハザードマップを活用し、浸水リスクを確認したうえで土地を選ぶようにしましょう。

プライバシーと防犯対策が必要

2階建てだから安心・安全というわけではありませんが、平屋住宅の場合は外部からの視線や侵入への対策をしっかり考える必要があります。生活の様子が外から見えやすく、人が在宅しているかどうかを判断されやすいため、防犯性の高い窓・鍵・外構などの工夫が求められます。また、家族間コミュニケーションが取りやすい反面、プライバシー性がやや低くなる傾向も。間取りによるゾーニングや個室空間の確保も検討しましょう。防犯対策の安全性と快適性を両立させた家づくりを心がけましょう。

監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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