家づくり

今人気の“ヌック”って何?くつろぎ空間を家に取り入れる方法

今、住宅デザインの中で人気を集めている「ヌック」。
「ヌックって何?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
ヌックがあると、家で過ごす時間が今まで以上に好きになったり、趣味やライフスタイルをより楽しめるようになったりと、暮らしに新しい“居場所”が生まれます。
快適かつ落ち着ける空間ができることで、休日の過ごし方や、仕事から帰ってきたあとの時間が、より豊かなものに変わるかもしれません。
今回は、そもそもヌックとは何なのか?どうやって取り入れるか?そして人気の理由についてご紹介します。

今人気を集めている「ヌック」とは?

ヌックとは、「こぢんまりとした居心地の良い空間」や「家族と程よく繋がりながら、一人でもくつろげる空間」のことを指します。語源はスコットランドで使われる「ヌーク(nook)」で、特定のデザインや色、形が決まっているわけではありません。居心地がよくリラックスできる、こぢんまりとした場所があれば、それを「ヌック」と言えるのです。ただし、ヌックは完全に仕切られた個室ではなく、段差や素材の違いなどを活かして空間を緩やかに区切る特徴があります。では、ヌックを取り入れることで、どのような暮らしができるのでしょうか?ヌックのメリット・デメリットを解説します。

ヌックのメリット

ヌックのメリットは大きく分けて3つ。

1.  個室ではないのにプライベート空間になる

2.  デッドスペースを有効活用できる

3.  子どもから大人まで幅広く多種多様に使える

ヌックは完全な個室ではなく、リビングなど家族の共有スペースとつながった場所に設けるのが一般的です。周囲と程よく区切られているため、プライベートな空間として活用できます。壁で仕切らない設計のため、限られた面積でも圧迫感が出にくく、心地よい“おこもり感”が演出できますし、リビングの一角や階段下、廊下の端など、空いているものの使いづらかったデッドスペースを有効に使える点も魅力です。使い方もさまざまで、子どもの遊び場、読書コーナー、ワークスペース、マッサージスペースなど、好みやライフスタイルに合わせて柔軟に活用できるところが支持を集めています。

ヌックのデメリット

メリットの多いヌックですが、デメリットもあります。主に以下の3つが挙げられるでしょう。

1.  導入費用がかかる

2.  最低限の面積が必要

3.  使わなくなる可能性もある

取り入れ方にもよりますが、ヌックの設置には費用がかかります。リラックスして座る場所や机、収納、照明、空間を区切るゾーニングなど、必要な設備によっては工事費や家具費用が発生します。また、コンパクトな面積とは言え、快適に過ごせる最低限のスペースが必要です。活用されていないデッドスペースがあればいいですが、ヌックのために新たに面積を確保するとなると、他の間取りを圧迫してしまう可能性があります。さらに、「人気だから作ってみたけれど、なかなか使う機会がない・・・」というケースも考えられます。目的が明確でなかったり、居心地のよくない設計だったりすると、結局使わなくなってしまうこともあるので気を付けましょう。

ヌックを取り入れる方法

子どもから大人まで幅広い用途で使える空間として、家族それぞれのライフスタイルに合わせた取り入れ方ができます。ヌックを活用する方法を、いくつかのパターンに分けて紹介します。

リーディングヌック

読書を楽しむことを目的としたヌックで、リビングの一角などにも手軽に取り入れられます。リラックスしながら静かに読書を楽しめる空間に、ゆったりした椅子や机、本棚などを揃えれば自分専用の図書館の完成です。好きな本に囲まれて過ごす時間は、心も体もリフレッシュできるひとときになるでしょう。

ワークスペースヌック

リモートワークや副業など、家で仕事をする機会が増えている現代。リビングやダイニングは家族との共有空間なので、「集中しにくい」「周囲が気になる」など仕事がしづらいと感じる人も少なくありません。そんなときも、ヌックをワークスペースとして活用すれば、落ち着いて仕事に取り組める場所が確保できます。特にオンライン会議の際には、周りの様子が視界に入りにくい、こぢんまりとしたヌックの“おこもり感”が、安心感と集中力を高めてくれるでしょう。子どもの学習スペースとしても使いやすいです。

階段下ヌック

階段下は、住宅内でありがちなデッドスペース。物置になりがちなこの場所も、ヌックとして活用すれば、有効な生活空間に生まれ変わります。ワークスペースやリーディングスペースとしてはもちろん、趣味のアイテムを並べた自分専用の隠れ家にしても楽しめるでしょう。

窓ヌック

窓際や出窓の空きスペースを使ったヌックもあります。自然光が入る空間で外の景色や風を感じながら、心地よく過ごせるでしょう。読書やコーヒータイム、お昼寝など、ゆっくりと穏やかな休日を楽しみたいときにも最適です。活用されにくい窓際のスペースも、ヌックとして使えば、特別なリラックス空間になるはずです。

子どもヌック

子どもの遊び心をカタチにした「子ども専用ヌック」も人気です。子ども用の家具やおもちゃを揃えれば、子どもが遊ぶ空間を固定でき、片付けもしやすくなる点も親には嬉しいポイント。本やおもちゃが散らかりにくく、自然と「自分の場所を自分で管理する」ことや、片付け習慣が身につきやすくもなるでしょう。

和室ヌック

「和室を作ろうか迷っている・・・」「和室を取り入れたいけれど、十分な広さが確保できない・・・」そんなときにおすすめなのが、和室ヌックです。日本人にとって畳のある和室は、寝転がるだけでも心が落ち着き、自然とリラックスできるもの。和室特有の落ち着いた雰囲気が、特別なひとときを過ごせる空間になります。

ヌックを取り入れるときのポイント

人気があるから・・・といった理由だけで安易に取り入れると、うまく活かせず失敗してしまうケースもあります。まずは使用目的や空間の特徴をしっかりと理解することが、理想的なヌックづくりの第一歩。ここでは、快適で実用的なヌックを作るためのポイントを解説します。

目的を決める

何をするための場所なのか、その場所で何をしたいのか、使用目的を明確にしましょう。目的が曖昧なままヌックを作ってしまうと、「結局あまり使っていない」「快適に使えていない」といった事態になりかねません。読書や仕事を目的とするなら、静かに過ごせる場所であることが大切ですし、子どもが使う場合は、大人の目が届きやすい場所が望ましいです。目的が定まれば、適切な場所選びやデザインなどがイメージしやすくなります。

緩い空間の仕切り

ヌックは、個室のように完全に区切らないのが特徴です。そのため、緩やかに空間を仕切る工夫が欠かせません。床や天井の高さを変えたり、素材や色味に変化をつけたりすることで、周囲と繋がりながらも視覚的に空間を区切ることができます。

こぢんまりした空間

ヌックの特徴は「こぢんまりした空間」であること。隠れ家や秘密基地のような空間になるので、広い面積では通常の部屋と変わらなくなってしまいます。目的にもよりますが、13帖程度のコンパクトな広さがちょうど良いでしょう。

家具や照明の選び方

ヌックに置く家具や照明は、目的に合ったサイズ感と機能性を重視しましょう。スペースが限られているため、大きすぎる家具は邪魔になり圧迫感が出てしまいます。コンパクトながらも快適に使える、デザイン性と実用性を兼ね備えたアイテムを選ぶことで、空間全体に統一感が生まれ、より居心地のよいヌックになります。

適度な収納

面積が限られているからこそ、ヌックに適度な収納スペースがあると便利。収納がないとモノが溢れやすく、せっかくのくつろぎ空間が散らかってしまう原因にもなります。壁面を活用した収納棚や引き出し付きベンチなど、省スペースでも収納力のある工夫を施すことで快適な空間を保てるでしょう。

監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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