暮らし

“余白”が暮らしを変える。使い道を決めない“フリースペース”の魅力

近年の家づくりでは、住まいの一部に「フリースペース」を設ける間取りが注目を集めています。
その名の通り、自由に使える空間であり、幅広い目的で活用できる場所です。
しかし、「フリースペースってどんな空間?」「どうやって活用するの?」とイメージできていない人も多いでしょう。
今回は、フリースペースの魅力や活用法、注意点をご紹介します。

フリースペースとは?

フリースペースとは、単に1部屋多くつくることとは異なる空間です。限られた面積の中で個室をつくれない場合でも、少しだけ独立した空間として設けられるのが特徴です。廊下、ロフトの下、階段の下、階段ホール、リビングの一角など、間取りの中のデッドスペースを活用するケースが多く見られます。特別に広い面積がなくても、自由に使える“余白”の空間がひとつあるだけで暮らしの幅がぐっと広がります。

フリースペースの嬉しいメリット

フリースペースは、個室を増やせなくてもその代わりを十分に果たしてくれる便利な空間です。その嬉しいメリットを挙げてみます。

将来設計の変化に対応しやすい

フリースペースは目的を決め込む必要がないため、その時々の必要に応じて使うことができます。子どもが小さい時、一人で趣味に集中したい時、家事スペースが欲しい時など、さまざまなシーンで活用できる点は大きなメリットです。家族のライフスタイルや将来設計は時とともに変化しますが、フリースペースがあることで、暮らしの変化にも柔軟に対応できます。

住まい空間に余裕が生まれる

フリースペースがあることで、住まい全体にゆとりが生まれます。「場所に困ったときはフリースペースを使おう」という選択肢があるだけで、暮らしに安心感が加わります。また、何にでも使える空間があることで視覚的にも広がりを感じ、住まいの窮屈さを和らげることができます。

別空間でもコミュニケーションがとれる

完全な個室ではないため、家族と程よい距離を保ちつつコミュニケーションが取りやすいこともフリースペースの特徴です。リビングとつながる場所に設ければ、小さな子どもが使う場合でも親の目が届くので安心です。

フリースペースのおすすめ活用法

自由に使えるフリースペースは幅広く活用できますが、ある程度の使用イメージを持っておくとより上手に活用できます。フリースペースのおすすめ活用方法をご紹介しましょう。

子ども部屋

フリースペースは、子ども部屋としても活用しやすい空間です。小さいうちは遊び部屋として活用すれば、おもちゃが他の部屋に散乱しにくくなり、フリースペース内で遊ぶ習慣づけにもなります。子どもの成長に合わせて、遊び場所から学習スペースへと移行することも可能です。可変性のある仕切りを取り入れれば、集中できる学習空間としても使えます。

ワークスペース・書斎

机やカウンター、椅子を置くだけで、ワークスペースや書斎として活用できます。リビングではリモートワークに集中しにくいですが、少し独立した空間があると作業がしやすいでしょう。

収納スペース

季節物や使用頻度の低い物を、フリースペースにまとめて収納するのもおすすめです。ただし、整理整頓を怠ると無駄なスペースになってしまうため、必要な物と不要な物をしっかり区別して活用しましょう。

洗濯物の部屋干し

梅雨や花粉の時期、雨の日など外に洗濯物が干せない日は少なくありません。そんな時にもフリースペースは活躍します。除湿機や扇風機などを併用すれば乾きも早く、家事効率もアップします。

セカンドリビング

リビングは家族が集まる場所である一方、一人でゆっくり過ごすのは難しいものです。フリースペースをセカンドリビングとして活用すれば、自分だけのリラックス空間や趣味の部屋として楽しめます。また、2階に設ければ日当たりが良く、より快適な空間になるでしょう。

フリースペースで後悔しないための注意点

自由に使えて便利なフリースペースですが、使い方を誤ると「思ったより活用できなかった」と後悔につながることもあります。ここでは、よくある注意点とその対策を解説します。

エアコンが効きづらい

フリースペースを廊下やホールに設けた場合、エアコンを設置しづらく、空調管理が難しくなります。夏は暑く、冬は底冷えしやすいため、快適に過ごせるように補助的な空調家電を用意しておくと安心です。快適に過ごせないと、有効活用できないスペースになってしまうので注意しましょう。

場所によっては落ち着かない

リビングとつながっているなど、人の視界や動線に入りやすい場所は、かえって落ち着かないスペースになってしまうことがあります。ワークスペースや趣味の部屋として使いたい場合は、生活動線を意識して設置場所を考えましょう。

空間が暗い

フリースペースは部屋として設計されていないため、窓がなく昼間でも暗い場所になりやすい傾向にあります。その場合は照明器具を設置し、明るさを補う工夫が必要です。

プライバシー性に欠ける

フリースペースは個室ではないため、プライバシーが確保しづらい面もあります。子ども部屋として使う場合は、小さいうちは問題なくても、成長と共にプライバシーに配慮した空間が必要です。可変性のある仕切りを設けるなどの工夫をしておくと利便性の高いスペースとなるでしょ

無駄なスペースになることも

「フリースペースがあれば何かに使えるだろう」「つくっておけば便利そう」と安易に設けるのは、後悔につながりやすいポイントです。利用目的をイメージしておかないと、使い勝手が悪くなり、結果的に無駄なスペースになってしまいます。具体的にどう使うかが決まっていなくても候補を挙げておき、フリースペースの活用方法をイメージしながら計画することが大切です。

コンセントや収納がない

意外と見落としやすいのがコンセントと収納です。パソコンや家電を使うなら電源が必要ですし、収納スペースがないと物が散乱するなど整理整頓がしにくいスペースになりやすいです。コンセントの位置や最低限の収納をあらかじめ計画しておきましょう。

監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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