家づくり

“空気がきれいな家”ってどんな家?換気・調湿・断熱の基本

近年、健康志向の高まりとともに、アレルギーや花粉、感染症対策の観点から「家の空気」への関心が高まっています。
しかし、空気のきれいさは目で確認できないため、その良し悪しを判断するのは難しいものです。
「空気がきれいな家を実現したい」「今の住まいは本当に大丈夫だろうか」と感じる方も多いでしょう。
そこで今回は、快適で健康的な暮らしに欠かせない【換気・調湿・断熱】の3つの基本から、“空気がきれいな家”についてご紹介します。

空気がきれいな家とは?

空気がきれいな家とは、赤ちゃんから大人まで、健康的で快適に過ごせる室内空間であることです。どれほどおしゃれで高級なデザインの家でも、空気が汚れていては心からくつろぐことはできません。では実際に、家の空気はどのような状態なのでしょうか?きれいな空気を保つための家づくりのポイントを解説します。

家の空気、実はこんなに汚れている

「家の空気は意外と汚れている」と聞いても、ピンとこない方も多いかもしれません。しかし現実には、排気ガスや花粉などが入り込み、外の空気より汚れているケースも少なくありません。さらに室内には、人から出るフケや皮膚の角質、衣類の繊維、ホコリ、ダニの死骸など、あらゆる物質が舞っています。自分では空気を汚しているつもりがなくても、日常生活で無意識に汚してしまっているのです。



【家の空気を汚してしまう主な原因】

・ホコリやチリなどのハウスダスト

・ダニの死骸

・花粉

・カビ

・ウイルス

・ペットの毛

・タバコの煙やニオイ

・化学物質

汚れた空気でどんな影響がある?

空気が汚れているからといって、すぐに健康被害が出るわけではありません。しかし、日常的に汚れた空気を吸い続けることで、次第に体に負担が蓄積され、重い症状につながる可能性があります。空気が汚れている家で過ごすことで考えられる、代表的な人体への悪影響は以下の3つです。

・免疫力の低下

・アレルギー症状

・呼吸器系の病気

免疫力は健康を支える基盤ですが、低下すると病気にかかりやすくなり、体調不良を繰り返す原因となります。また、花粉やハウスダスト、ダニの死骸はアレルギーを引き起こし、咳やくしゃみなどの症状で生活の質を大きく下げます。さらに症状が悪化すると、気管支炎や肺炎、喘息など、深刻な呼吸器疾患へと進行するリスクもあるため注意が必要です。

きれいな空気に欠かせない換気・調湿・断熱の役割

きれいな空気の家を実現するには、「換気・調湿・断熱」の3つをバランスよく整えることが欠かせません。どれか一つに偏ってしまうと快適さが損なわれ、空気の質を十分に保つことはできません。「換気・調湿・断熱」それぞれの役割を理解して、うまく組み合わせることで、より健康的で心地よい室内環境がつくれます。

換気システムの重要性

空気がきれいな家にするためには、室内と外気の空気の循環が欠かせません。そこで重要なのが「換気システム」です。2003年の建築基準法の改正により、1日中空気の入れ替えができる「24時間換気システム」の設置が義務化されました。気密性の高い住宅が増える一方で、化学物質や有害物質の影響によるシックハウス症候群が懸念されたことが義務化の主な理由です。換気システムによって空気の循環を常に行うことができ、ニオイや湿気などを排出できます。「外気の排気ガスやPM2.5等を室内に取り込んでしまわないか?」という心配の声もありますが、高性能なフィルターを使用することで有害物質を除去し、きれいな空気を取り込むことが可能です。

調湿が健康環境のカギ

調湿とは、室内の湿度を調整してコントロールすることです。換気によって湿度を外に排出することはできますが、外気自体が高湿度の場合は十分に調整できないこともあります。人が快適に過ごせる湿度は約4060%とされており、低すぎても高すぎても健康被害を及ぼすリスクにつながります。湿度が40%を下回ると空気が乾燥し、風邪やインフルエンザなどのウイルスが広がりやすくなるほか、肌の乾燥や喉の不調といったトラブルを招きます。一方で、湿度が60%を超えるとジメジメとした不快感に加え、ダニやカビが発生しやすくなり、窓際の結露によって建物自体の劣化も進んでしまいます。このようなリスクを防ぐためには、調湿機能を備えた建材やシステムを取り入れることが快適で健康的な住環境を維持する重要なポイントです。

【調湿性能がある代表的な素材】

・珪藻土

・無垢材

・漆喰

・コルク材

断熱が快適環境の土台をつくる

さらに重要なのが「断熱」の役割です。断熱というと外気の暑さや寒さを遮るイメージですが、換気や調湿の効果を活かすためにも欠かせません。断熱性の低い家では外気の影響を受けやすく、換気や調湿の効果を十分に発揮できません。そのため、結露やカビが発生しやすい環境になります。一方、断熱性の高い空間は温度や湿度が安定しやすく、きれいな空気の循環が可能です。換気システムや調湿素材と組み合わせることで、“空気がきれいな家”を実現できます。また、断熱性の高い家はエアコンなどの空調設備も効率よく稼働でき、省エネ効果も期待できます。

“空気がきれいな家”を選ぶ具体的なポイント

きれいな空気の家にする条件として、「換気・調湿・断熱」の3つのバランスが重要であることを解説してきました。実際にどのような視点で選ぶべきか、具体例でご紹介します。

換気システム+高性能フィルター

換気システムにはいくつかの種類がありますが、なかでもおすすめなのが、給気と排気の両方を機器で制御できる「熱交換型換気システム」です。外気を室温に近い温度で取り入れられるため、快適さを保ちながら効率的に換気が行えます。さらに、この換気システムに高性能フィルターを組み合わせることで、花粉やPM2.5といった微細な汚れを除去し、よりきれいな空気を室内に取り込むことが可能になります。換気システムは基本的に「空気の循環」を担いますが、フィルターを併用することで「空気の質」を高められる点が大きなメリットです。

調湿素材+デザイン性

珪藻土や漆喰は調湿に優れた素材として、住宅の内装によく使われています。例えば、リビングや寝室の壁・天井の仕上げ材として取り入れられるほか、壁紙クロスの代わりに珪藻土を塗るケースもあります。また、漆喰は和の雰囲気と相性が良く、空間のデザイン性を高めながら調湿効果を発揮できる点も魅力です。

断熱性による快適空間の実現

断熱性の高い家は、室内の温度差を抑えることで換気や調湿の効果をより高め、“空気がきれいな家”づくりに大きく貢献します。壁・床・屋根に断熱材を適切に施工したり、ペアガラスや樹脂サッシを採用したりすることで、外気の影響を受けにくくできます。その結果、夏は外の熱気を遮り、冬は暖かさを逃しにくいため、一年を通して快適な温度と湿度を保ちやすくなります。また、結露の発生を防ぐことでカビやダニの繁殖リスクを軽減し、建物の劣化を防ぐ効果も大きなメリットです。断熱性能を高めることは、快適さや省エネ効果だけでなく、健康的で快適な住まいの実現に欠かせません。

監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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