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家づくり
“乾燥しすぎる家”にならないために。調湿・換気・素材選びの基本
冬になると「肌がカサカサ」「喉がイガイガ」「朝起きたら静電気でバチッ」。
そんな経験はありませんか?
外気の冷たさだけでなく、住まいの乾燥が進むと、私たちの体や家そのものにも大きな負担がかかります。
一方で、夏はジメジメとした湿気に悩まされる日本の気候。
1年を通して快適に過ごすためには、「湿度のバランスをどう保つか」が重要です。
乾燥対策というと「加湿器」や「暖房の設定」に注目しがちですが、実は住宅の素材や換気の設計によっても、快適な空気環境を保つことができます。
今回は、“乾燥しすぎる家”にならないために、調湿・換気・素材選びの基本をご紹介します。

目次
乾燥しすぎる家で起こるリスク
冬に乾燥してしまうのは仕方ない・・・という気持ちもありますが、乾燥しすぎる住まい環境は決して良いとは言えません。ここでは、乾燥によって起こる暮らしのリスクを解説します。
肌や唇の乾燥とトラブル
乾燥を真っ先に感じやすいのは肌や唇です。肌のかゆみや肌のカサつき、唇のひび割れなど、目に見えて実感しやすい症状が現れます。症状が悪化すると、肌荒れや湿疹などの肌トラブルを引き起こすこともあります。また、髪がパサついたり、目の乾燥(ドライアイ)を感じやすくなったりするのも特徴のひとつです。スマホやパソコンで目を駆使する現代では、特に注意が必要です。
感染症のリスク
冬場にインフルエンザや風邪が流行しやすいのは、乾燥した空気がウイルスを活性化させるためです。空気が乾燥すると、ウイルスが空気中に漂いやすくなり、感染リスクが高まります。さらに、乾燥した環境ではホコリやハウスダストも舞いやすく、アレルギー症状を引き起こす要因にもなります。「乾燥=感染症やアレルギーのリスクが高まる環境」と意識しておくことが大切です。
不快な静電気
「ドアノブに触るとバチッ」「服がまとわりつく」など、冬特有の静電気も乾燥が原因です。静電気は不快なだけでなく、ホコリを吸着しやすいため、家具や家電の汚れの原因にもなります。静電気が起きにくい湿度を保つことは、清潔で快適な暮らしにもつながります。
火災トラブル
冬は乾燥に加えて、暖房器具を使用する時期でもあります。空気が乾燥していると、空気中や素材の水分量が減り、わずかな火種でも燃え広がりやすくなります。火災への注意は通年必要ですが、特に乾燥する冬場は見えないリスクとして意識しておきましょう。
乾燥しすぎる家の原因
家が乾燥しすぎてしまう主な原因は、大きく分けて2つあります。
暖房器具による乾燥
冬場は寒さ対策としてエアコンやヒーターを使うことが多くなります。これらの暖房器具は欠かせませんが、同時に乾燥の原因にもなってしまいます。特に、エアコンやセラミックヒーターなど温風を出すタイプの暖房は、湿度を下げやすい傾向があります。乾燥を防ぐための有効な方法は以下の3つ。
・加湿器を併用する
・オイルヒーターや床暖房など「輻射式」暖房を使う
・サーキュレーターで空気を循環させる
これらを上手に取り入れて、乾燥しにくい環境をつくりましょう。
気密性と換気のバランス
近年の住宅は高断熱・高気密化が進み、外気の影響を受けにくい設計になっています。これは省エネや快適性の面では大きなメリットですが、換気の仕方によっては乾燥を招くこともあります。多くの住宅には24時間換気システムが導入されていますが、冬場は外の乾いた空気を取り込み続けることで室内の湿度が下がってしまうことがあります。気密と換気のバランスを取り、「乾燥しにくい換気の仕方」を意識することが大切です。
調湿と換気で乾燥対策
「調湿」と「換気」は、湿気対策のイメージが強いかもしれませんが、乾燥対策としても効果的です。ここでは、調湿と換気を活かした乾燥対策について解説します。
調湿建材を使用した乾燥対策
調湿建材とは、湿度が高いときには湿気を吸収し、乾燥しているときには水分を放出する素材のことです。壁や天井などに使うことで、室内の湿度を自然にコントロールしてくれます。代表的な調湿建材には「珪藻土」や「漆喰」などがあり、自然素材ならではのやわらかな風合いも魅力です。機械に頼らず、家全体を快適な空気環境に保てることから、新築はもちろんリフォーム時の採用も増えています。
乾燥を抑える換気の仕方
ウイルス対策やホコリの抑制のため、寒い季節でも定期的な換気は欠かせません。換気を怠ると、結露やカビの原因にもなります。ただし、外気を取り入れすぎると室内の湿度が下がり、加湿器の効果も薄れてしまうことがあります。乾燥を抑えながら換気を行うには、1時間に2〜3回、1回2分程度の短時間換気がおすすめ。空気を入れ替えつつ、湿度の急低下を防げます。ウイルスやホコリ対策と乾燥防止のバランスを意識しましょう。
乾燥を抑えるための素材選び
乾燥対策に加湿器は有効ですが、一方で過度な加湿はカビの原因にもなります。ひとつの方法として、建材として使える天然素材を上手に活用するのもおすすめです。天然素材は人体への負担が少なく、赤ちゃんやペットがいるご家庭でも安心。住まいの設備の一部として自然に湿度を調整できるのが魅力です。乾燥を抑える効果を期待できる、代表的な天然素材をご紹介します。
珪藻土
珪藻土は、海や湖に生息していたプランクトンの化石からできた自然素材。最近ではバスマットやコースターなどにも使われ、身近な素材として知られています。無数の微細な孔が湿気を吸収・放出することで、室内の湿度を調整します。また、消臭・断熱効果もあり、リビングや寝室、玄関など幅広い空間で活用できます。シンプルで和洋どちらのデザインにもなじみやすいことも珪藻土のメリット。ただし、メンテナンス時にひび割れしやすい注意点があるので、施工には職人の技術が求められます。
漆喰
漆喰は石灰石を主成分とした自然素材で、古くから城や蔵などにも使われてきました。独特の風合いを持ち、空間のアクセントにもなります。湿度をコントロールし、カビやダニの発生を抑えるほか、光をやわらかく反射するため空間を明るく見せる効果もあります。珪藻土と同じく調湿性が高く、加えて抗菌・防火性能にも優れているのが特徴です。
無垢材
無垢材とは、天然木をそのまま使った建材で、木が本来持つ調湿性が特長です。空気中の水分を吸収・放出しながら、季節に応じて快適な湿度を保ちます。美しい木目や温かみのある質感、清々しい香りなど、視覚・触覚・嗅覚のすべてで癒しを感じられるでしょう。特にフローリングに採用した場合は、素足で歩いたときの足触りの良さも魅力。乾燥対策とリラックス効果の両方を叶えてくれる人気の天然素材です。
監修 野村 綾乃氏
株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役
大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。



