家づくり

耐風等級って何?家の安全性を考えるなら見逃せない項目です!

1.耐風等級ってなんのこと?

耐風等級とは、建物が風に対してどのくらい耐性があるかを評価したものです。
風が吹くと建物には圧力がかかります。風によって圧力がかかっても、倒壊や損傷しない強度を建物が持っていることを示します。耐風等級が規定されているのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」です。
耐風等級には「耐風等級1」と「耐風等級2」があり、後者の方が風に対する耐性が高くなっています。建築基準法により、建物は耐風等級1の基準を満たしていなければいけません。それぞれの詳細は以下のとおりです。

耐風等級1

500年に1度の極めて稀な暴風では建物が倒壊せず、50年に1度の暴風でも損傷しない強度を持っていることが耐風等級1の基準です。国土交通省が定める「日本住宅性能表示基準」によると、「極めて稀な暴風」の定義は風圧力とは速度圧と風力係数から算出するものの1.6倍の力となっています。(速度圧とはガスト影響係数と基準風速から算出されるものとなります。)
2000年に建設省(現・国土交通省)が各地域の基準風速を設定しました。台風の通り道になることが多い沖縄県全域や鹿児島県の一部では、基準風速は46㎧です。東京23区の基準風速は34㎧となっています。これらの数値から、各地域で家を建てる際の風に対する耐性の基準が定められています。

耐風等級2

耐風等級2の基準は、耐風等級11.2倍の耐久性能です。耐風等級1より高い住宅性能のメリットは安全安心だけではありません。内装の仕上げ材がキレイに保たれる期間が延びることもメリットの1つです。
耐風等級1の住宅より耐風等級2の住宅の方が、暴風にさらされても揺れにくくなります。風で住宅が揺れると、壁紙や塗り壁などの内装の仕上げ材が少しずつ損傷します。
暴風による揺れが少ない耐風等級2の住宅では内装の仕上げ材の損傷を抑えられるため、メンテナンスにかかる手間や費用の削減にもつながるでしょう。

2.台風に強い家づくり

台風に強い家を目指す上で、暴風で損傷しやすい箇所を把握し、その箇所を補う対策を施すことが重要になります。住宅の損傷は構造躯体に修復が必要な被害があることを指し、ひび割れや内装の被害は含まれません。

損傷しやすい箇所

暴風によって損傷しやすい箇所は、以下の3つです。 

・屋根

・壁

・ドアや窓

外壁から外側へ突き出した軒下がある住宅の場合は、下から風にあおられることで屋根がはがれたり、吹き飛ばされたりする可能性があります。
軒下がないタイプの住宅でも窓ガラスが割れると内部に風が入り、下から圧力がかかり屋根が吹き飛ばされるケースがあるでしょう。軒下があると雨が外壁に当たりにくくなるため、外壁の劣化を抑えられる効果があります。軒下は大きく突き出しているほど雨を防げますが、暴風にさらされた場合には被害を受けやすくなります。
屋根が損傷を受けると雨漏りや、染み込んだ水分で壁の劣化が進む可能性があるでしょう。

風速40㎧を超えると住宅が倒壊する可能性があり、風速35㎧では外壁に被害が出る可能性があるとされています。風圧力で壁材がはがれることもありますし、暴風による飛散物で壁が損傷を受けることもあります。
壁材がはがれた部分から雨が染み込み穴が開くと、風が内部に吹き込んで屋根の損傷につながる場合もあるでしょう。窓ガラスは風圧力や飛散物で割れやすく、割れたガラスでケガをしたり、窓から雨風が吹き込むことで壁や屋根にも被害が及んだりするため対策が必要です。

 

ドアが閉まっている状態では風の力で壊れる可能性は低いですが、開け閉めの際には壊れる可能性があります。強い風が吹いている時にドアを開けると、外側に引っ張られるケースがあります。勢いがついて外壁に打ち付けられるとドアが破損したり、ドアノブが変形したりする可能性があるでしょう。暴風によって損傷しやすい箇所を補い、台風に強い家づくりを目指すためのポイントについては、以下に解説します。

損傷しやすい場所を強化しましょう

台風に強い家づくりのためのポイントは4つあります。

・暴風に強い屋根

・窓ガラスを守る

・立地条件

・平屋も候補に入れる

1つめのポイントの暴風に強い屋根をつくる上で重要になるのが、形状と素材、工法の3点です。外壁から外側に突き出した軒下の部分を少なくしたり、屋根の傾斜角度を小さくしたりするなど、風の影響を受けにくい屋根の形状を家づくりに取り入れることが重要です。
軒下の面積が大きいと下から受ける風圧力が強くなります。屋根の傾斜が大きくなるほど風を受け止める形になるので、耐風性能を考える上では適していません。素材は強度が重要になります。屋根材の強度が低いと変形したり、損傷しやすかったりするからです。
同じ屋根材を使っても工法によって耐風性能に差が生じます。たとえば瓦を用いた場合でも、浅木に引っ掛けただけの瓦屋根と、くぎやビスなどで固定された瓦屋根では暴風に対する耐性に違いがあります。また、どんなに強度が高い屋根材を用いても経年劣化は避けられません。メンテナンスを怠ると防水性能の低下やひび割れにもつながり、耐風性能も低くなります。定期的なメンテナンスを心がけましょう。

2つめのポイントが窓ガラスを守るために有用な雨戸やシャッターの設置です。台風の際にはゴミや木の枝など、多くの飛散物があります。窓の外側に雨戸やシャッターを設置することで、飛散物で窓ガラスが割れるのを防げるでしょう。

3つめのポイントの立地条件によって、住宅が受ける暴風の影響は異なります。障害物がある方が風の影響を抑えられます。たとえば、家が密集している地域では風圧力が分散するため、1軒あたりの風圧力が弱くなり被害を受けにくくなるでしょう。
逆に沿岸部で防風林もなく住宅の間隔が広い立地では、暴風の影響をそのまま受けるので、損傷を受ける可能性が高くなります。また、大きな建築物に隣接していたり、挟まれていたりする立地は注意が必要です。大きな建築物に当たった風が一カ所に集中することで、台風の勢力以上の風が発生する可能性があるからです。屋根や雨戸などで住宅の耐風性能を上げることに加え、立地による風の影響の違いにも配慮しましょう。

4つめのポイントが平屋の検討です。なぜなら平屋は、2階建ての住宅より風圧力が小さくなるからです。
外壁の面積が減るため強風の影響を受けにくくなり、住宅が被害を受ける可能性が低くなります。また、平屋はメンテナンスの手間と費用を抑えられることもメリットの1つです。外壁の面積が大きいほど風圧力が加わり劣化が早まります。耐風性能を保つためには劣化を放置せず、定期的にメンテナンスを施す必要があります。
外壁の面積が小さい平屋は風圧力も小さくなり、劣化を抑えられるためメンテナンスの手間と費用の削減につながるでしょう。

3.耐風等級のまとめ

安全性の高い家づくりを考える上で、耐震等級と同様に、暴風に対する耐性を評価する耐風等級にも配慮が必要です。
耐風等級1より耐風等級2の方が耐風性能が高く、さらに強風で損傷しやすい箇所に対策を施すことでより安全性の高い住宅になります。これから家を建てたり、購入したりする場合には、この記事で解説した台風に強い家づくりのポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

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監修 一級建築 代表取締役 原 康人氏

株式会社三建コンサル

個人・法人のお客様から土地や建物に関するご相談(空き家、相続、土地建物の売買など)を伺い、ご提案をしながら一緒に解決策を見出しています。建築設計はもちろん、土地の測量、農地転用や市町村の申請書類作成も行っており、「土地から建物の相談役」として皆様のお役に立てるよう努めています。

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