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住宅ローン減税【2022年以降改正】のポイント~控除率引き下げでも、適用年数13年で実は得する人も~

令和3年度の税制改正で控除率引き下げでも、適用年数13年で実は得する人も?!

1.そもそも住宅ローン減税とは?

令和3年度の税制改正を受けて、これから(20224月以降)に住宅を取得されようと検討されている方に向けて、住宅ローン減税(住宅ローン控除)に関する情報をご案内します。

住宅ローン減税の始まり

住宅ローン減税とは、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローン控除と言われることもあります。原点は1972年に始まった住宅取得控除制度で、国民の住宅取得を支援することを目的として始まり、その時々の情勢に合わせて変化してきました。
住宅の取得は単に私達の幸福度を高めるだけでなく、住宅産業は非常に裾野が広いことから日本経済の活性化のためにも重要視されています。時には景気対策として、時には消費税増税時の負担軽減のため、と政策的な目的を持って今まで変遷してきました。

住宅ローン減税は当然受けられる権利ではなく、時代ごとの政策として利用できる制度ですので、変更点に一喜一憂せず内容について理解して活用するのがいいでしょう。

なんでお得なの?

基本的なことですが、住宅ローン減税(控除)という名前がある通り、税金がお得になる制度です。税金と言ってもいろいろな種類がありますが、住宅を購入する時に支払う不動産取得税や、手続きの際に必要になる印紙税などの減税ではなく、住宅ローンを借りた人がお仕事などで収入を得た時に納める所得税と住民税の一部が対象となります。

本来納めるべき所得税と住民税の一部が住宅ローンの残債に応じて還付や減額される、という仕組みがお得な制度となっています。当たり前と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは重要なポイントで、納めるはずの税金が減税されるということは、皆さん一人一人の納税額(所得)によって受けられるメリットが変わってくるということになります。

皆さんはご自身の所得税額、住民税額を聞かれて即答できますでしょうか?少しでもお得を手に入れようとして誤った判断をされないよう、お気をつけください。

2.新しくなった2022年の制度を解説

変更点のポイント(控除率の見直しと環境への配慮)

今回の改正は控除率の見直しと環境への配慮という2点が大きなテーマと言えます。
一つ目は控除率の見直しです。長引く低金利やマイナス金利、金融機関の競争などで住宅ローンの借入金利は歴史的に低い水準にあります。今までの控除率だと、借入金利よりも控除される割合の方が大きくなり、住宅ローンを借りたほうが得、となってしまうケースもありました。住宅の取得を後押しするはずの制度が「住宅ローンを借りて節税」という本来の趣旨から逸脱してしまってはいけない、ということで控除率が引き下げられることになりました。

もう一つは低炭素社会への取り組みとして国を上げて目標達成を目指していることは周知のことかと思いますが、私達が暮らす住宅についても環境負荷が低いものが普及するほど望ましい、ということにもなります。詳細は後述しますが、耐久性が高く耐用年数の長い住宅や省エネルギー性能の高い住宅の取得について、より手厚いものになっています。

控除率の見直し、控除期間が13年に延長

住宅ローン減税では、減税を受ける年の年末(1231日)時点での住宅ローン残高に控除率をかけた金額が減税の上限額となります。
住宅ローンの年末残高が3,000万円だった場合、1%の時は30万円が減税となる上限額だったのに対し、0.7%だと21万円と減額になってしまいました。ここでご注意いただきたいことは、控除率をかけた金額がそのまま減税となる金額とは限らない、ということです。
上記の例だともともと納める予定の税額(控除対象となる税額)が21万円以下の方の場合、納税する金額以上にお金がもらえる訳ではないので1%でも0.7%でも同じ金額となります。

一方で控除期間が、今までは原則10年(特例で13年)だったものが、原則13年と延長されました。また、減税を受ける人の所得上限も3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げられ、高所得者については対象から外れることになります。

環境への配慮

住宅ローンの借入も多ければ多いほど減税になる、というわけではなく、借入限度額という規定があります。何億円という豪邸を建てる資力がある人に減税が必要かと考えれば理解できるでしょう。

この借入限度額が住宅の性能に応じて細分化されました。より環境負荷の低い長期優良住宅・低炭素住宅については5000万円まで、ZEH水準省エネ住宅については4500万円まで、省エネ基準適合住宅については4000万円まで、その他の住宅については3000万円までとなります。社会的資産価値の高い住宅取得ほど減税額でより強く応援しよう、という内容になっています。

3.制度改正は損か得か

実は得する、というのはこんな方

今回の改正では、控除率が引き下げられたことで所得水準が高い(納税額が多い)方の減税額は下がってしまいましたが、期間が13年に延長されたことから返済期間が長期に渡る方にとっては有利となることから、中間層や低所得層の方にとってはプラスとなる可能性がある内容となっています。

 収入も多く返済期間も短い住宅ローンを借りられる方、例えば中高年世代の方々にとってはメリットが減ってしまうことになりますが、今は収入が高くなく長期返済となりそうな方、例えば若い年代のファミリー層で35年返済のローンを組む場合などは有利となるように考えられています。

住宅ローン減税のためにローンをたくさん借りたほうがいい?

控除率が1%で住宅ローン金利が0.40.5%であれば、その金利差分がお得になるので住宅ローンは目一杯借りたほうがいい、という話を聞いたことがあるかもしれません。

今回の改正で控除率が0.7%と引き下げられたことから、金利差分が縮小され上記のようなスキームはメリットが薄れることになりますが、この仕組を利用しようと考える際にはいそもそもご注意いただきたいことがあります。

一つ目はこれまでに解説しました通り、ご自身で納めるはずの税金が減税となるため所得などによって減税となる金額に上限がある、ということです。上限を超える金額となる借入をしても、利息や手数料が高くなって終わり、ということになってしまいます。
 二つ目は将来納めるであろう税金が減税される、ということです。以前は所得が高かったのに、新型コロナウィルスの影響で収入が激減して納税額も少なくなってしまったとか、夫婦二人で分散して住宅ローン減税を利用していたけれど、出産後に復職できない事情ができて妻の収入が(納める税金が)無くなってしまった、などという例もあります。減税期間を終わってみないと、そのメリットは確定しないものなのです。
三つ目として「減税分を貯金しておいて13年後に返済に充てるといい」と考える場合は特にご注意ください。減税される金額の所得税分は還付となりますが住民税分は翌年に納める金額が減額になる形のため、ある日減税分がまとめて口座に振り込まれるというものではありません。還付分も生活費口座に入金され気がついたら使ってしまっていた、ということもよくあります。「減税分を貯金」するためには、強い意志と確実に残せる仕組みの導入が必要になります。

住宅ローン減税、と聞くと多くの給与所得者の方は自分の意志で選択できる数少ない節税方法だと、魅力的に感じてしまう方もいるかも知れませんが、まずはご自身のライフプランにあった金額の設定を検討し、その中で享受できるメリットを可能な限り受ける、ということを考えていただきたいです。

情報が多すぎて判断に迷う場合は、金融機関等に所属していない独立系のファイナンシャルプランナーなどに相談されるといいでしょう。

監修 鈴木 大輔氏

家計のサポートセンター 代表ファイナンシャルプランナー

静岡県浜松市で活動する独立系ファイナンシャルプランナー。住宅取得を希望するファミリー層からの信頼が厚く、住宅展示場でのセミナー、相談員などの依頼も多くこなす。地元金融機関の職員教育にも携わり、FMハローのラジオ番組「カネラジ〜お金の話をするラジオ」パーソナリティとしても活躍中。


家計のサポートセンターhttps://www.kakei-sc.jp

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